奈良のデザイン事務所、パーキーパット・デザインズ代表の前田です。
今回はデザインを考えるときの参考になる例として、服を買いに行く時のことをイメージすると、とてもデザインがしやすくなるというお話をします。これはデザインを考える上での1つの手法として捉えてもらっても良いかもしれません。またはデザインの構築方法で、こういう頭が無いとダメなんだという感じ方をしてもらってもおもしろいかもしれません。
今回は、新しい服を買いに行くときのお客の立場になってみることを考えていきます。
では新しい服を買う時をイメージしていきましょう。まず新しい服を買う時に大前提として、「自分に合う/自分に似合う服が欲しい」と考えますよね。とっても当たり前のことですが、これがまずは大前提です。これを見失うとイメージがズレてしまいます。
この大前提でおもしろいと僕が感じるのが、ピッタリ100%イメージに合う服というのに出会う必要がないことです。むしろ100%理想ピッタリで出会った服を何着持っていますか? まぁ大体は「おっ、これ良いかも」ということを考えて、例えば店員に勧められたり、一緒に買い物に来た人に良いと言われて「よし買おう」となっているのではないでしょうか。あるいは試着室で鏡に映った自分を見つめて熟考しますよね。
ここでのおもしろい気づきは、客観的に見た自分があるんですよね。自分が似合うかどうかを誰かに判断してもらいたいという気持ちです。もし一人で買い物して意見もらえる人がいなくても、客観的に自分を見つめて合うかどうかを考えるということをしているのではないでしょうか。それの最たるものが鏡の自分を見て買うか検討していることでしょう。
この状態をもうちょっと分かりやすい言葉で表現すると、新しい服を買った自分をそこでイメージできるかです。そして似合っていれば買う、似合っていなければ買わない。はい、ここで気づいてほしいことがありまして、最初はおそらく好き嫌いで服を選ぶのですが、最終的には自分に似合っているかどうかで、その服を買うかどうかを決めるんです。
これおもしろいですよね。好き嫌いが大きな要因ではなく、客観的に見た自分がイメージできるかで服を買うんです。だからこそ店員さんは、積極的に来店してきた人に話しかけて商品を勧めていきます。
ここで優秀な店員さんであれば、お客様の似合った服のイメージを出しているんですよね。例えば、「これデートに着ていったら素敵」とか「仕事用に派手すぎず、オシャレに見られる」などと、いかにお客様に似合っているかを教えてくれます。接客が上手くない店員さんはこれができておらず、ただただ自分の売りたい商品を「いかにこの商品はオシャレか、トレンドか」を説いて勧めてくるだけなのです。それじゃお客の心は動きませんよね。(そしてそういう店員さんが多いイメージをお客は持っているので、過剰な接客を嫌う傾向にはありますよね)
この新しい服を買いに行くときのことを、デザインを考える要素に落とし込むと、「どういう相手にどういう内容を伝えていくか」に直結します。客観的に見て、その商品/サービスが自分に合っているか(必要か)どうかをイメージしてもらうことで、成果が変わってきます。
お客様相手に「この商品/サービスが良い内容だから好きでしょ?買いませんか?」とやっていても、そう言われたお客様は、本当に100%好きが合致しないと買ってくれません。自社の売りたい商品やサービスが、必要な人に向けてしっかりと説明が出来れば、相手はそれを使った自分をイメージできて買おうかなとなるものなのです。
そこをチラシやパンフレット、WEBサイト(ホームページ)などで訴求できているかなのです。好き嫌いを誘うのではなく、ターゲットに必要なものであることをいかにわかりやすく伝えられるか、なのです。
上記のような状態になっているとしたら、訴求できていない部分を見直してみましょう。装飾したりタレントを使ったビジュアルを使ったりとかする以前のデザイン構築でズレが出ています。続きはWEBにしてもよいのですが、どんな商品やサービスであっても「あなたに似合っていますよ」が言えているかどうか、ここがデザインのミソになってくるのです。
以上、デザインを考える上で大切なことを、新しい服を買いに行くときをイメージさせて落とし込みました。「デザインは表層美だけを考えるものではない」というところに思考が結びつくととても良いデザインが出来てきます。見た目が良くても「カッコいいね」と言われるだけで、お金を払って商品を買ってもらわないと、あまり意味がありませんよね。そのための、思考のヒントとして考えました。
好きになってもらうことももちろん大切なことですが、好きをゴリ押ししていくのではなく、お客様にそれが必要なものであることを、いかにわかりやすく伝えられるか、ここに意識があるだけで、訴求ポイントを押さえたデザイン物が作れるようになります。
「お似合いですよ!」を伝えられるデザイン、それをしっかりカタチにするのはもちろん簡単なことではありませんが、ここに成功のヒントがあります。